【自然に任せて看取る】老猫がリンパ腫だった(前半)

この記事は19歳の愛猫を自宅で看取り備忘録記事です。

飼い猫の体調がおかしい、リンパ腫と診断された、シニア猫の看取り方で迷っている人の参考になれば嬉しいです。

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愛猫の紹介

うちには2匹の兄弟猫がいます。
目も明かないうちに捨てられていた兄弟猫にウシとクロウと名付けました。

そして2025年1月26日(日)。
19年のニャン生に幕を閉じたウシ。

家族全員で最期を看取ることができました。

猫の平均寿命は14歳。
完全室内外でも16歳です。
とても長生きしてくれました。

ウシは生まれつき左足関節が弱いけど日常生活に支障はなし。
3歳にはストルバイト結石(尿路結石の一種)を患いました。
早期発見だったので抗生剤と療法食で完治。
それ以降は大きなケガや病気はしていません。

老猫の体調の変化と検査結果

17歳を過ぎた頃から体調の変化を感じることがありました。

・しっぽの動きが下がりぎみでぎこちない
・食欲旺盛なのに太らない
・車酔いをするようになった

病院に行くきっかけは酷い車酔いでした。
車には慣れていたウシとクロウ。

病気が発覚する1年前の夏は嘔吐と排便。
同年の冬には嘔吐、排便に加えて口呼吸をするようになりました。
命が危ないと思いすぐ帰宅。
家についてもずっとぼーっとしてて本当にしんどそうです。

動物病院で行ったのは血液検査、レントゲン、超音波、尿検査、細胞診の5つ。

しっぽが下がりっぱなしになる原因は関節炎。
加齢により軟骨がすり減ったことで関節の痛みやこわばりが起こります。

食べているのに太らない、車酔いは深刻な病気の症状でした。

低悪性リンパ腫の疑いあり

診察の結果、低悪性リンパ腫の可能性があると医師から言われました。

「可能性がある」

つまり確定診断ではありません。

赤い矢印は異常値を意味します。
ウシはほとんどが異常値でした。
血液検査では貧血状態であること、体のどこかで炎症が起こってることがわかりました。

レントゲンでは腸間膜のリンパ節が腫れを確認。
リンパ節は免疫を作ってれる場所で、体で炎症が起きると腫れます。

通常は5mmくらいなのに対してウシは大きいもので3cmまで腫れあがっていました。
普通の炎症レベルではない大きさだから腫瘍の疑いが強いそうです。

いろんな角度から撮ったレントゲンにはいくつも同じものがあることから、腫瘍は1個や2個ではないだろうと予測。
腸間膜のリンパ節の数は個体差があるから何個と断言できないそうです。
現段階でわかるのは腸間膜のリンパ節に大きい腫瘍がいくつもあり、腹水が少し溜まっているってことでした。

細胞診とは腫れているリンパ節に細い針を刺して細胞を見る検査です。
その結果、ウシは低悪性リンパ腫の可能性が高いと言われました。

リンパ腫には大きく分けると2種類あるそうです。
・大細胞性である「高悪性リンパ腫」
・小細胞性である「低悪性リンパ腫」

ここまでをまとめると、腸間膜の低悪性リンパ腫である可能性が高いってのが医師の見立てです。

確定診断のリスクと対処方法

細胞診でわかるのはあくまで可能性です。
確定診断をするには組織を取って検査するほかありません。

部位によっては負担の少ない内視鏡で組織を取ることも可能ですが、ウシの場合は手術のみ。
開腹手術でリンパ節をいくつか取ってきて病理検査に出してはじめて確定診断となります。

人間で言ったら95歳のおじいちゃんなんだよな。
全身麻酔の手術に耐えられるとは到底思えない。

医師からも体力的に現実的ではないと言われました。
なぜならかなり痩せているのと貧血により麻酔で体調を崩す可能性が高くリスクが伴うからです。

そこでもう一つの方法として遺伝子検査の話があがりました。
遺伝子検査とは、細胞診で取った細胞を増幅して細胞のタイプが高悪性リンパ腫と低悪性リンパ腫のどちらに近いかを比べる検査です。
確定診断には至りませんが、いくつかの証拠の可能性が出そろうので確定診断に一歩近づくことができます。
薬で治療をするなら遺伝子検査をしたほうがいいんじゃないかというのが医師の考えでした。

老猫のリンパ腫を薬で治せるのか?

飼い主として気になるのは「薬の治療でどこまで回復できるのか」です。

医師の回答は「回復するのを期待したい」。

そりゃそうなんよ。
生き物だからこれをやったら必ずこうなるというわけにはいきません。
今思えばバカな質問をしたなと思うけど不安事をすべて質問しちゃってましたね。

優しい医師は自分の経験則を踏まえて話を進めます。
膨大な量のデータがあるわけではないが報告によっては9割良くなっているのでやる価値はある。
ただ、マイルドだけど抗がん剤だから嘔吐や下痢などは起こり得るし、白血球が減ることもある

リンパ腫には完治はなくて寛解(かんかい)となる。
寛解とは症状が見られなくなったから大体治ったという見方をする。
リンパ腫は細胞レベルの腫瘍だから体の中からなくなったという証明ができない。
だから治療のゴールは寛解である。

また、高悪性リンパ腫に比べれば低悪性リンパ腫は治りやすい。
実際に医師が飼っている猫も同じリンパ腫で薬で治療をして割とすぐ治まって、今でも週1回の服薬をしているそうです。

治療にあたって問題があるなら薬を飲むかどうか、副作用がどのくらい出るのか。
薬を飲んでハイお仕舞いというわけではなくて、副作用をモニターしたり効果の判定をしなくてはいけない。
そのためには月に数回の通院が必須。
それができるかどうか。

やってみないとわらないことはあるけど、やってみる価値はあるんじゃないか。
というのが医師の考えです。

リンパ腫の治療をしなかったらどうなる?

このときのウシは体重が2.65キロしかありませんでした。

昔の写真と見比べるとかなり痩せているのがわかります。
健康体であれば6キロ、ぽっちゃりなら7キロくらいあっていい体格です。

医師の説明ではこれだけ痩せていると体力があまりない。
食欲があっても腫瘍のせいでうまく栄養を摂取できずに痩せてしまう。
さらに慢性的な炎症から貧血が起こる。
腎臓の状態もあまりよくない状態。

このまま治療をしないと脱水症状、低栄養が続いて心臓や内臓の筋力が衰えたことにより臓器不全で亡くなる子が多いと教えてもらいました。

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猫の寿命は猫が決める

治療に前向きな医師に聞きました。

「人によってはこれを寿命ととらえてもおかしくないってことですか?」

「寿命ととらえてもらってもいいと思います。ほとんどの悪性腫瘍は高齢期に起こりやすくなるものですから、大きな意味合いで言えば寿命と言えば寿命です。そう捉えるなら遺伝子検査以降はやらなくていいと思います。」

「遺伝子検査の費用はどれくらいですか?」

「大体ですが25,000円ほどです。」

「そんなもんなんですね。じゃぁ、やりまs……」

まで言いかけて私は躊躇しました。

ウシの寿命を決めていいのか?

どもる私に医師は1日くらいなら待てるから明日、電話でどうするか報告してはどうかと言ってくれました。
なので検査の話は一旦持ち帰り。

車で片道10分の動物病院だけどやっぱり車酔いをしたウシ。
何度も嘔吐するし、排便もしてました。

死は悪ではない

結論から言うと遺伝子検査はしませんでした。
ただし痛みや症状を抑える緩和ケアはします。

ここからは私の考えです。

死ぬのなら一か八か治療に賭けるか、自然に任せて死を迎えるか。
残された側にとって究極の二択だと思います。

遺伝子検査をして抗がん剤治療をしたら良くなるかもしれない。
それはそう。

でもこの次は?
リンパ腫が再発したり、ほかの病気が見つかったときにまた検査や治療をするんだろうか。
そうやって伸ばした命をウシは喜んでくれるんだろうか。
体はどれくらい辛いんだろうか。

私は10時間の陣痛が辛すぎて医者に腹を切ってくれと懇願したし、卵巣茎捻転なんて死んだほうがマシと思いました。
それらの経験からわかったことは苦しみ、痛みが一生続くのは生き地獄ってことです。
体より精神が先に壊れる場合もあるでしょう。

ウシの体が最期を迎えようとしています。
だったら自宅でいつもの日常を過ごす方がウシの幸せだろう。

旦那も同じ考えで8歳の息子はどちらが正解なのかわからないようでした。

翌日、検査と治療をしないことを病院に伝えました。
続きは後半へ。

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